突然、訪れる相続手続きにパニックになってしまう人もいるでしょう。
相続手続きは、いつまでに何をすれば良いのでしょうか。もし手続きをしなかったら、どうなるのでしょうか。
今回は相続手続きの期限について解説していきます。
相続手続きの全体の流れと期限
相続手続きの流れとしては、基本的には期限が定められているものに向けて動いていく形になります。期限が定められていないものでも、その手続きを行わないと期限付きの手続きができない場合もありますので、早急に手続きしていく必要があります。
以下に主な相続手続きを時系列でご紹介します。
※期限が定められているものは期限を、定められていないものは目安を記載しています。
死亡届(7日以内)
金融機関へ連絡(早急に)
公共料金・携帯電話・クレジットカード・賃貸住宅などの手続き(早急に)
団体信用生命保険・住宅ローンの手続き(なるべく早く)
生命保険会社へ連絡(なるべく早く)
生命保険金の請求(3年以内)
健康保険の手続き(14日以内)
健康保険の埋葬料・葬祭費支給(2年以内)
年金の手続き(10~14日以内)
国民年金の死亡一時金請求(2年以内)
相続手続きを専門家に依頼するか検討(適宜)
遺言書の確認(目安:1ヶ月)
相続人の調査(目安:2ヶ月)
相続財産の調査(目安:2ヶ月)
相続の限定承認または放棄(3ヶ月以内)
遺言書の検認手続き(目安:3ヶ月)
所得税の準確定申告(4ヶ月以内)
遺産分割協議と遺産分割協議書の作成(目安:6ヶ月)
銀行や証券会社、不動産登記など各種相続手続き(目安:8ヶ月)
相続税の申告(10ヶ月以内)
配偶者相続税軽減の手続き(3年以内)
遺留分減殺請求(1年以内)
相続手続きはまず被相続人が生前に使用していたサービスなどを停止させるために各機関への連絡などから始まります。そして、次に相続手続きのために動いていくことになります。相続人の調査をし、相続財産の調査をします。それをもとに相続人同士で遺産分割協議をして、誰が何を相続するのかを決めていきます。そして実際に相続手続きや名義変更を各機関で行い、相続税の申告が必要な場合は申告と納税をして終了です。
初めは相続手続きを自分でやってみようと考える人が多いと思いますが、平日の昼間に何度も足を運ばなければならなかったり実際にやるのは時間と労力が必要です。自分でやってみて結局、専門家に依頼する人も多いようです。従って、相続手続きを開始する前に一度、専門家に相談してみるのも良いと思います。
期限内に相続手続きをしなかったらどうなるのか?
遺産分割協議が長引いてしまったり、相続手続きに時間がかかってしまったなど期限内に相続手続きに進まないこともあります。
それではもし期限内に相続手続きをしなかったら、どうなるのかを見ていきましょう。
相続放棄の手続きをしなかったら?
相続が開始されてまず考慮しなければならないのが、相続をするかどうかを決めることです。
例えば、被相続人の財産はプラスだけでなく借金などマイナスの財産も含まれます。マイナスの財産のほうが多い場合、相続しないほうが良いでしょう。相続放棄するかどうかの熟慮期間は3ヵ月しかありません。
3ヵ月を過ぎてしまうと単純相続となってしまうので注意が必要です。
相続放棄をするかどうかを判断するためには被相続人の財産を調べる必要があります。また相続人の数によっても事情が変わってくることがあるので、相続人の調査も必要です。
銀行などの預貯金の手続きをしなかったら?
銀行などの預貯金は被相続人が死亡したことを金融機関が知ったときから口座が凍結されます。各金融機関所定の手続きをしないと口座から預貯金を引き出すことができません。
あまりいないとは思いますが、もし、この金融機関への相続手続きをしなかったら、どうなるのでしょうか。
まず銀行などの金融機関に預けている金銭は預金者が債権者、金融機関が債務者という関係になります。そして債権には消滅時効というものがあり、権利を行使しないとその権利が消滅してしまいます。通常この時効は民法だと10年間権利を行使しないと消滅し、債権・所有権以外の債権は20年で消滅します。この期間は法律や債権の種類によって変わってきます。銀行は商法による商人となり、銀行預金は商事となります。そのため銀行預金に関しては5年間権利を行使しないと消滅時効となります。金融機関でも信用金庫や労働金庫、信用協同組合などの共同組織系は商人ではないので消滅時効は通常の10年ということになります。
つまり銀行などの金融機関で相続手続きをしなかったら、その債権は消滅時効にかかってしまうということです。とはいえ、実際に時効が成立するには債務者が援用しなければなりません。実際には金融機関がこの時効を援用することはあまりないそうです。しかし、理論的には金融機関が援用することはできるので、遺産分割協議が済んだら、または遺言書で相続する場合は、なるべく早く金融機関で相続手続きをするのが良いでしょう。
不動産登記の手続きをしなかったら?
実は相続手続きの中で、後回しにされているのが不動産の登記手続き(名義変更)です。
不動産登記の期限は特にありません。罰則もありません。
従って、ついつい後回しにされてしまいがちなのです。しかし、不動産登記の相続手続きを後回しにしていると、面倒なことになります。
相続人にAとBがいたとします。遺産分割協議を行い、Aが不動産を相続しました。しかし、その後、Aが不動産登記の手続きをする前にBが死亡してしまいました。この場合、Bが印鑑証明書を添付していれば問題ないのですが、印鑑証明書を添付する前に亡くなってしまうと印鑑証明書を発行できなくなってしまうので、遺産分割協議が行われたことを証明する書類がさらに必要なります。この証明書にBの相続人から署名と実印で押印してもらいます。証明書の内容としては、遺産分割協議書作成の日付、相続人が死亡したことにより印鑑証明書が添付できなくなったこと、遺産分割協議書が正しく作成されたこと、それを証明する者の署名と押印という形です。
このように不動産登記の手続きをしなかったら、余計な手間と時間がかかってしまいます。不動産登記がなされないと不動産を売却したりすることも困難になるので早めに登記の手続きをしておくほうが賢明です。
相続税の申告をしなかったら?
相続税の申告は相続開始から10ヶ月以内という期限があります。
では、この申告期限内に申告をしなかったら、どうなるのでしょうか。
もし、期限内に申告をしなかったら、追徴課税される危険性があります。追徴課税には申告をしなかったことに対する追徴課税と納付しなかったことに対する追徴課税があります。申告もせず、納付もしなかった場合はダブルで追徴課税されることになります。
また、期限内に申告をしないと、配偶者の税額軽減制度や小規模宅地等の特例といった減税の特例を受けられなくなります。
遺留分減殺請求をしなかったら?
兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分というものがあります。
遺留分とは最低限もらえる相続財産の割合のことで、例えば、法定相続人がABCの3人いたとします。遺言書で相続人Aに全ての財産を相続させる内容が書かれていた場合、相続人Aは他の相続人であるBCの遺留分を侵害しています。
この遺留分を取り戻す請求を遺留分減殺請求と言います。
遺留分減殺請求には期限があり、相続開始があったことを知った日から1年間の間に請求しなければ時効となりますので、注意が必要です。
相続手続きをしないと相続人が増えて大変なことに・・・
相続手続きをしていない場合で、もっとも懸念されることは相続する前に相続人が死亡してしまった時です。厳密に言うと、遺産分割協議をする前に亡くなってしまった場合です。
遺言書がない場合、相続人同士で何を相続するのか話し合いをすることになります。これを遺産分割協議と言います。話し合いがまとまったら遺産分割協議書を作成して、各相続人が署名し、実印で押印して印鑑証明書を添付します。これにより各相続手続きをすることができるのですが、遺産分割協議をする前に相続人が亡くなってしまうと、その相続人の相続人が権利を承継することになります。これを数次相続
例えば、被相続人A、相続人がBCDといたとします。BCDは落ち着いてから遺産分割協議を行おうと考えていましたが、遺産分割協議をする前にBが亡くなってしまいました。Bには配偶者と子が2人います。すると、今度はBの配偶者と子2人が相続人としてCDと遺産分割協議をすることになります。単純に相続人が多ければ多いほど様々な意見が出てくる可能性が高いので、もめやすくなります。
また、相続人の一人が認知症になってしまう可能性もあります。そうなると成年後見人の選任が必要になったり、場合によっては特別代理人の選任が必要になることもあります。
このように手続きの量や提出書類も増えるので、相続手続きは早めにしておくことに越したことはないのです。
相続手続きはいつまでにすれば良いのか?
上記のように、相続手続きをしないことによって様々なデメリットが生じます。しかし、相続の手続きは何でもかんでも早くやらなければならないものばかりではありません。
相続となるとやることが沢山あって、こんなにできないとパニックになってしまう人もいますが、まずは落ち着いて、自分達の相続手続きは何が必要なのかを整理しましょう。最初にご紹介した相続手続きの一覧を見て、自分達の相続手続きはどれに当てはまるかを確認し、その期限についても確認してください。そして期限が定められているものに関しては注意して、期限内に手続きが完了できるように行動してください。
早くやらなければならないものだと焦ってしまう人もいますが、正直なところ期限が定められていないものに関しては後回しにしても構いません。大切な人を亡くしたばかりなのに、手続きというドライな気持ちにはすぐになれない人もいるでしょう。しかし、やらなくてはならない手続きは、いずれどこかのタイミングで必ずしなければなりません。まずはやることを整理して、直近でやらなければならない手続きを一通りして落ち着いたら、故人を偲び、法要などが済んだら残りの手続きについて行動に移していくと良いでしょう。
まとめ
さて、いかがでしたか?
今回は相続手続きをいつまでに何をしなければならないのかについて解説させていただきました。
まず、相続が開始されたら、やらなければならないことを整理して順番に手続きをしていきましょう。手続きは相続人の数や相続財産の数などでも量が変わってきますが、手に負えなそうだと感じたら、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に相談してみるのも良いと思います。その費用と、自分がやることの手間や労力を比較して検討しましょう。
以上、「【相続の期限】手続きはいつまでに何をする?しなかったらどうなるの?」でした。
最後まで、お読みいただきありがとうございます。
コメント