故人の遺言書を発見したらどうすればいいのか。
遺言書は場合によって検認という手続きをしなければなりません。
検認しないとどうなるのか。
検認後の流れは?
などなど今回は検認についてや遺言書の見つけた時の対処法について解説していきます。
遺言書を見つけたら
故人の遺品を整理していたら遺言書を発見した、ということがあります。
まずはその遺言書が自筆証書遺言なのか、公正証書遺言なのかを確認しましょう。
封印がされている自筆証書遺言の場合、遺言書を見つけても中を開けてはいけません。
自筆証書遺言の場合は、直ちに検認という手続きを家庭裁判所にしなければなりません。
封印がされている自筆証書遺言は検認時に家庭裁判所が開封します。
封印がされていない自筆証書遺言の場合であっても検認は必要となります。
遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
遺言書が公正証書遺言の場合、検認は不要です。
検認とは
検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
裁判所ウェブサイトより
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_17/
遺言書を検認しないとどうなる?
上記のように自筆証書遺言を発見したら、家庭裁判所に検認手続きをしなければなりません。
もし自筆証書遺言を家庭裁判所に提出せず検認をしないで遺言を執行したり、家庭裁判所以外で開封してしまった場合、5万円以下の過料に処せられます。
検認の手続きをしなければならない相続人が遺言書を隠したりすれば相続欠格者となります。
また遺言により遺贈を受ける受遺者も同様に受遺欠格者となります。
検認をしないと銀行の手続きや不動産登記を行えないので必ず検認手続きをしましょう。
遺言書は検認で無効になる?
検認は遺言書の内容を明確にして偽造や変造を防止することが目的で、遺言書自体の有効・無効を決定するものではありません。
検認した後、その効力の無効を裁判で争うことはできます。
検認しないで開封した遺言書は無効になる?
もし、検認をせずに遺言書を開封してしまったとしても、その遺言書が無効となることはありません。
検認をしないで開封してしまった場合、5万円以下の過料を処せられる可能性はありますが、実際に罰せられるかは微妙なところです。
誤って開封してしまった場合でも事情を説明して家庭裁判所に申立てをしましょう。
検認手続きの方法
遺言書の検認手続きは家庭裁判所におこないます。
どこでも良いわけではなく、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にしなければなりません。
管轄裁判所
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_17/
申立人は遺言書の保管人や遺言書を発見した相続人です。
手続きに必要な書類は以下の通りです。
・遺言書検認申立書
・遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・遺言者の子やその代襲者で死亡している方がいる場合、その子やその代襲者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
申立前に入手不可能な戸籍謄本などがある場合、申立後に追加で提出することもできます。
その他にも下記の書類が必要となる場合があります。
【相続人に遺言者の父母・祖父母等(直系尊属)がいる場合】
遺言者の直系尊属で死亡している方がいるときは、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本。
【相続人が不存在の場合、相続人が遺言者の配偶者のみの場合、相続人に遺言者の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)がいる場合】
・遺言者の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・遺言者の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・遺言者の兄弟姉妹に死亡している方がいる場合、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・代襲者としてのおいめいに死亡している方がいる場合、そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
申立てに必要な費用は遺言書1通につき、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が必要です。
申立書の書式
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/21m-betsu1.pdf
申立書の記載例
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/280610igonnsyokennnin.pdf
当事者目録
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/0000keizokuyousi.pdf
検認の申立ては申立書自体の作成はそれほど難しくはありませんが、戸籍謄本などの収集が少し面倒です。
家庭裁判所や役所に確認しながら、集めていけば時間はかかるかもしれませんが一般の方でも収集できると思います。
「作業をする時間がない」、「面倒だ」という人は弁護士などの専門家に依頼しましょう。
遺言書の検認期間
申立書の不備や添付書類の追加等がなければ、申立てから1ヶ月ほどで検認期日通知書が相続人に届きます。
家庭裁判所から検認期日について確認の電話が来ることもあります。
必要書類の収集などを考慮すると検認が終わるまで1~2ヶ月ほどかかる場合もあります。
その間は相続手続きを行えないので、早めに申立ての準備をしましょう。
遺言書検認期日通知書
遺言書検認の申立てがおこなわれると、相続人や受遺者などに対して裁判所から検認を行う日が書かれた遺言書検認期日通知書が送付されます。
出欠席を回答する用紙も同封されています。
検認の期日は原則として延期することはできません。
不明な点があれば家庭裁判所に問い合わせましょう。
検認を欠席したらどうなる?
申立人以外の相続人が検認期日に出席するかどうかは、各相続人の判断となります。
検認を欠席したからといって特に不利となることはありません。
従って、検認を欠席しても問題はなく、相続人が全員揃っていないとしても検認手続きはおこなわれます。
但し、申立人が欠席することはできません。
検認は代理人でも良いの?
検認は弁護士に代理人となってもらうことができます。
また相続人が未成年の場合、親が法定代理人として参加することもできます。
弁護士を代理人として依頼した場合、検認当日に同席してくれますし、裁判官への説明などもしてくれます。
検認手続きを弁護士に依頼することもできます。
検認申立書の作成や戸籍謄本の取り寄せ、裁判所との連絡などを行ってくれます。
検認期日の持ち物
申立人は遺言書、申立人の印鑑などを持っていきましょう。
そのほかにも指示されたものがあれば持参します。
どれも忘れることのないように注意しなければなりませんが、特に遺言書は忘れないようにしましょう。
遺言書がなければ肝心の検認ができません。
検認当日はどんなことをするの?
検認当日は申立人が持参した遺言書に封印がしてあった場合は出席した相続人の立会いのもと裁判所が開封して検認します。
検認の際は、遺言書を発見した経緯や状態などを確認されたり、どんな用紙を使っているか、中に何が入っているかなどを確認します。
そしてどんな筆記用具を使用しているか、遺言書の筆跡が遺言者のものであるかどうかや遺言者の実印かどうかなどを確認されます。
筆跡が遺言者のものか識別できないときや実印かどうか知らないときは「わからない」で構いません。
その場の雰囲気で曖昧な返答をすると後で遺言書の有効・無効を争ったときに不利になる可能性もあります。
可能であれば故人の手紙を持参するなどして、きちんと確認しましょう。
検認自体は10~20分ほどで終了します。
検認が終了すると検認済の印が押され遺言書が返却されます。
検認後の流れ
検認後の流れとしては、検認に立ち会わなかった相続人や受遺者、利害関係人に検認されたことが通知されます。
その後、通常は遺言の執行となります。
遺言執行者が定められている場合は、その者が執行します。
遺言を執行するには検認済証明書が必要となりますので、検認済証明書の申請をしましょう。
遺産の割合を指定しているような遺言書の場合は何を誰が相続するのか遺産分割協議が必要となります。
遺言執行の負担を考慮して、弁護士や司法書士、行政書士といった専門家に相続手続きを依頼するのも良いでしょう。
遺言書検認調書謄本
裁判所では検認中に確認したことを調書にまとめます。
これは遺言書検認調書といって、相続人は裁判所に申請すれば、遺言書や封筒のコピーと一緒に交付してくれます。
検認手続きに参加できなかった相続人などで、遺言書の中身を知りたいという場合は検認調書を申請しましょう。
銀行によっては自筆証書遺言の場合、相談手続きの際に遺言書検認調書謄本が必要になる場合もあります。
また自筆証書遺言の場合、相続登記は遺言の原本を添付しますが、検認後、遺言書を紛失してしまったとき、遺言書検認調書謄本を添付すれば登記が可能な場合もあるようです。
遺言書検認調書謄本の申請書
http://www.courts.go.jp/kyoto/vcms_lf/030403_sonota_syo_TouhonShinsei.pdf
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