相続税の按分割合の計算方法

相続の手続きについて

ここでは相続税の計算の仕方について解説していきます。

相続税の計算は簡単なように見えて意外と難しいものです。

特に按分割合の計算でつまづく人が多いと思いますので、そこを詳しく紹介していきます。

按分割合とは

そもそも按分割合とは何か?

按分とは物やお金などを基準となる数に比例して割り振ることです。その割合が按分割合となります。

例えば出資額に応じた額によって、得た利益を按分割合で割り振るといったことです。これによりある程度、公平に利益を分け合うことができます。

各人の課税価格の算出

それでは早速、相続税の計算の仕方を見ていきましょう。

まず最初にやるべきことは各人の課税価格の算出です。

課税価格は相続税を計算するにあたって基礎となる金額になります。ここを間違えてしまうと全ての計算をやり直すことになりますので、正しく算出しましょう。

 

【課税価格の計算方法】

相続や遺贈で取得した財産 + みなし相続財産 ー 非課税財産 ー 債務控除 + 相続前3年以内の贈与財産 + 相続時精算課税に係る贈与財産の価額

みなし相続財産とは被相続人は財産として所有していないけれども被相続人の死亡によって発生する財産のことです。例えば死亡保険金や死亡退職金などがあります。

非課税財産とは墓地や墓石、仏壇などの財産です。

1 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
 ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。
2 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
3 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
4 相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
 なお、相続税の対象となる生命保険金については相続税の課税対象になる死亡保険金で説明しています。
5 相続や遺贈によってもらったとみなされる退職手当金等のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
 なお、遺族が受ける退職手当金、功労金については相続税の課税対象になる死亡退職金で説明しています。
6 個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの
 なお、相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件となります。
7 相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によってもらった金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの


国税庁ホームページより
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4108.htm

債務控除とは相続財産から控除できる債務のことです。相続税を計算するときは、被相続人が残した借入金などの債務を遺産総額から差し引くことができます。遺産総額から差し引くことができる債務は借金などの債務や葬式費用です。差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。被相続人に課される税金で被相続人の死亡後相続人などが納付又は徴収されることになった所得税などの税金については被相続人が死亡したときに確定していないものであっても、債務として遺産総額から差し引くことができます。

ただし、相続時精算課税適用者の死亡によりその相続人が承継した相続税の納税に係る義務を除きます。また相続人などの責任に基づいて納付したり、徴収されることになった延滞税や加算税などは遺産総額から差し引くことはできません。葬式費用は債務ではありませんが、相続税を計算するときは遺産総額から差し引くことができます。

相続税の総額の算出

相続税の総額は総課税価格から遺産に係る基礎控除額を引いて算出します。まずは各人の課税価格を合計します。

【例】
課税価格の合計額 = 法定相続人甲の課税価格 + 法定相続人乙の課税価格

次に課税価格の合計額から基礎控除額を引きます。

遺産に係る基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
※平成26年12月31日以前に相続が開始(被相続人が死亡)した場合の基礎控除額は 5,000万円 + 1,000万円 × 法定相続人の数 となります 。※ここでの法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数となります。

課税価格の合計額から基礎控除額を引いたものが課税遺産総額となります。

課税遺産総額 = 課税価格の合計額 - 基礎控除額
※課税価格の合計額 ≦ 基礎控除額となる場合は相続税はかかりません。

次に各法定相続人の税額を出します。
まず課税遺産総額を、各法定相続人が民法に定める法定相続分に従って取得したものとして、各法定相続人の取得金額を計算します。

法定相続分に応じた各法定相続人の取得金額(千円未満切り捨て) = 課税遺産総額 × 各法定相続人の法定相続分

次に各法定相続人ごとの取得金額に税率を掛けて相続税の総額の基となる税額を算出します。
各法定相続人の税額 = 法定相続分に応じた各法定相続人の取得金額 × 税率 - 控除額

【相続税の税額速算表】

法定相続分に応ずる取得金額 税率  控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

各法定相続人の税額の合計が相続税の総額となります。

各相続人の相続税の算出

次に各法定相続人の相続税を計算します。

相続税の総額は相続人全員が負担することとなる金額です。各法定相続人の相続税は取得した課税価格に応じた割合、つまり按分割合で計算します。

按分割合 = 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額

各相続人の相続税 = 相続税の総額 × 按分割合

実際の納付額は各相続人の相続税額から各種税額控除を引いたものが納付額となります。

各種税額控除

  • 暦年課税分の贈与税額控除
  • 配偶者の税額軽減
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 外国税額控除

※財産を取得した人が被相続人の配偶者、父母、子供以外の者である場合、税額控除を差し引く前の相続税額にその20%相当額を加算(相続税額の2割加算)した後、税額控除額を差し引きます。子供が被相続人の死亡以前に死亡しているときの孫(その子供の子)については、相続税額にその20%相当額を加算する必要はありませんが、子供が被相続人の死亡以前に死亡していない場合の被相続人の養子である孫については加算する必要があります。
※各相続人等の控除後の税額が赤字の場合は「0」になります。

さらに各相続人等の控除後の税額から「相続時精算課税分の贈与税相当額(外国税額控除前の税額)」と「医療法人持分税額控除額」を引いたものが各相続人等の税額となります。
※相続時精算課税分の贈与税相当額を控除した結果、赤字の場合又は「0」のときには、医療法人持分税額控除額は「0」となります。

暦年課税分の贈与税額控除

暦年課税分の贈与税額控除とは贈与税と相続税の両方を払わなくて良いようにする制度です。

通常、贈与された金額が基礎控除額(110万円)を超えた場合、贈与税を支払います。そして、相続開始前の3年以内に被相続人から贈与された財産は、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算します。

しかし、これでは贈与税と相続税の2つの税を支払うことになってしまいます。そこで贈与税を支払っている場合、その贈与税額を加算された人の相続税から控除することができます。贈与額が基礎控除額以下などで贈与税を支払っていない場合は適用できません。

配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した遺産額が、1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。

配偶者は被相続人と一緒に財産を形成してきた背景があり、被相続人の死亡後はその財産で生計を立てていくこととなります。そのため配偶者に関しては大幅な税額控除があるのです。

配偶者の税額軽減額の計算方法

計算の仕方としては①か②の少ないほうの金額が税額軽減額となります。

①配偶者の算出税額
②相続税の総額 × a・bの少ないほうの金額 ÷ 課税価格の合計額
a 配偶者の法定相続分相当額(課税価格の合計額 × 配偶者の法定相続分)
※この金額が1億6,000万円に満たないときは1億6,000万円。
b 配偶者の課税価格

未成年者控除

相続人が未成年者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引くことができます。

未成年者控除が受けられるのは次のすべてに当てはまる人です。

(1)相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます。)
相続や遺贈により財産を取得したときに日本国内に住所がない人でも次のいずれかに当てはまる人は適用されます。
イ 日本国籍を有しており、かつ、その人が相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人。
ロ 日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人(被相続人が、一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます。)。
ハ 日本国籍を有していない人(被相続人が、一時居住被相続人、非居住被相続人又は非居住外国人である場合を除きます。)。
(2) 相続や遺贈で財産を取得したときに20歳未満である人
(3) 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること。

平成29年3月31日以前の相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税については、上記(1)の要件は次のとおりになります。
(1) 相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人
又は、日本国内に住所がない人でも次のいずれかに当てはまる人
イ 日本国籍を有している人で、その人又は被相続人が相続開始前5年以内に日本国内に住所を有していたことがある。
ロ 日本国籍を有していない人で、相続や遺贈で財産を取得したとき、被相続人が日本国内に住所を有している。

未成年者控除の額は、その未成年者が満20歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額です。年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。

【例】
未成年者の年齢が15歳9か月の場合は、9か月を切り捨て15歳で計算します。この場合、20歳までの年数は5年になります。したがって、未成年者控除額は、10万円×5年で50万円となります。

未成年者控除額が、その未成年者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引き切れない場合は、その引き切れない部分の金額をその未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。
※扶養義務者とは、配偶者、直系血族及び兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者をいいます。

また、その未成年者が今回の相続以前にも未成年者控除を受けているときは、控除額が制限されることがあります。

障害者控除

相続人が85歳未満の障害者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引くことができます。

障害者控除が受けられるのは次の全てに当てはまる人です。

(1)相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます。)
(2) 相続や遺贈で財産を取得した時に障害者である人
(3) 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること。

平成29年3月31日以前の相続開始の場合には、上記⑴の要件は次のとおりになります。
「相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人」

 

障害者控除の額は、その障害者が満85歳になるまでの年数1年(年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。)につき10万円で計算した額です。特別障害者の場合は1年につき20万円となります。

また、障害者控除額が、その障害者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引き切れない場合は、その引き切れない部分の金額をその障害者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。
※扶養義務者とは、配偶者、直系血族及び兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者をいいます。

その障害者が今回の相続以前の相続においても障害者控除を受けているときは、控除額が制限されることがあります。

相次相続控除

相続開始前10年以内に被相続人が相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得し相続税が課されていた場合には、その被相続人から相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人の相続税額から、一定の金額を控除することができます。

相次相続控除が受けられるのは次の全てに当てはまる人です。
(1)被相続人の相続人であること
(2)その相続の開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得していること
(3)その相続の開始前10年以内に開始した相続により取得した財産について、被相続人に対し相続税が課税されたこと
※適用対象者は、相続人に限定されています。相続の放棄をした人及び相続権を失った人が遺贈により財産を取得しても、この制度は適用されません。

相次相続控除は、前回の相続において課税された相続税額のうち、1年につき10%の割合で逓減した後の金額を今回の相続に係る相続税額から控除します。各相続人の相次相続控除額の計算の仕方は次の通りです。

各相続人の相次相続控除額 = A × C ÷ (B – A)[割合が100/100を超えたときは100/100] × D ÷ C × (10 – E) ÷ 10

A:今回の被相続人が前の相続の際に課せられた相続税額
この相続税額は、相続時精算課税分の贈与税額控除後の金額をいい、その被相続人が納税猶予の適用を受けていた場合の免除された相続税額並びに延滞税、利子税及び加算税の額は含まれません。
B:被相続人が前の相続の時に取得した純資産価額(取得財産の価額+相続時精算課税適用財産の価額-債務及び葬式費用の金額)
C:今回の相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額
D:今回のその相続人の純資産価額
E:前の相続から今回の相続までの期間
1年未満の期間は切り捨てます。

相続税の2割加算

相続税額の2割加算とは被相続人の一親等の血族又は配偶者以外の者が財産を取得した場合、控除前の相続税額に2割加算することです。被相続人の兄弟姉妹や孫、養子になった孫が相続した場合に適用されます。

代襲相続人は適用外。養子になった孫については、被相続人の子どもが被相続人の死亡する以前に死亡していない状況で孫を養子にした場合に適用されます。反対に言うと、被相続人が存命中に子供が死亡し、その孫を被相続人が養子にした場合は適用されません。相続税の2割加算の意義は兄弟姉妹や孫、養子になった孫は財産形成の貢献度が低いにもかかわらず財産を取得することになるためです。また子供を通り越して孫が相続すると相続税を1回免れることになるためです。

相続税の計算例

それでは相続税の計算の仕方を例を使って紹介します。

被相続人の財産が10億円、相続人は配偶者、長男、長女の3人とします。各相続人が取得した財産は配偶者が7億、長男が2億円、長女が1億円。この場合の相続税を計算してみましょう。

課税価格の合計額
課税価格の合計額 = 法定相続人甲の課税価格 + 法定相続人乙の課税価格 +・・・
70,000万円 + 20,000万円 + 10,000万円 = 100,000万円

基礎控除額
遺産に係る基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

課税総額
課税遺産総額 = 課税価格の合計額 - 基礎控除額
100,000万円 ー 4,800万円 = 95,200万円

法定相続分に応じた各法定相続人の取得金額
【配偶者】95,200万円 ×1/2 = 47,600万円
【長男】 95,200万円 × 1/2 × 1/2 = 23,800万円
【長女】95,200万円 × 1/2 × 1/2 = 23,800万円

各法定相続人の税額
各法定相続人の税額 = 法定相続分に応じた各法定相続人の取得金額 × 税率 - 控除額
「配偶者」 47,600万円 ×50% ー 4,200万円 = 19,600万円
「長男」23,800万円 × 45% ー 2,700万円 = 8,010万円
「長女」23,800万円 × 45% ー 2,700万円 = 8,010万円

【相続税の税額速算表】

法定相続分に応ずる取得金額 税率  控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税の総額
19,600万円 + 8,010万円 + 8,010万円 = 35,620万円

各相続人の相続税
按分割合
【配偶者】70,000万円 ÷ 100,000万円 = 0.7
【長男】20,000万円 ÷ 100,000万円 = 0.2
【長女】10,000万円 ÷ 100,000万円 = 0.1

【配偶者】35,620万円 × 0.7 = 24,934万円
【長男】35,620万円 × 0.2 = 7,124万円
【長女】35,620万円 × 0.1 = 3,562万円

配偶者の税額軽減額
①か②の少ないほうの金額が税額軽減額
①配偶者の算出税額 → 24,934万円
②35,620万円 × 50,000万円 ÷ 100,000万円 = 17,810万円
相続税の総額 × a・bの少ないほうの金額 ÷ 課税価格の合計額
a 配偶者の法定相続分相当額 50,000万円(100,000万円 × 1/2)
b 配偶者の課税価格 70,000万円

17,810万円が配偶者の税額軽減額となります。

各相続人の納付税額
【配偶者】24,934万円 ー 17,810万円 = 7,124万円
【長男】7,124万円
【長女】3,562万円

相続税按分割合計算のフロー

課税価格の合計額を算出

課税価格の合計額から基礎控除額を差し引く

課税遺産総額が出る

課税遺産総額に各法定相続人の法定相続分を掛ける

法定相続分に応じた各法定相続人の取得金額が出る

法定相続分に応じた各法定相続人の取得金額に税率を掛け、控除額を差し引く

各法定相続人の税額が出る

各法定相続人の税額を合計すると相続税の総額が出る

各人の課税価格を課税価格の合計額で割る

各法定相続人の按分割合が出る

相続税の総額に按分割合を掛ける

各種税額控除する(配偶者の税額軽減など)

各相続人の納付税額が出る

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