相続争いの件数はどれほどのものなのか

相続について

近年、相続争いが増加していると言われています。
実際、相続争いの件数はどれほどあるのか。
今回は相続争いに関する件数やデータをご紹介していきます。

 

相続財産の内訳

まずは相続財産の内訳から見ていきましょう。
下の表は平成27年の取得財産価額の内訳です。

平成27年分 取得財産価額

目的物 価額 割合
土地 5,939,957百万円 37.98%
家屋、構築物 834,336百万円 5.3%
事業用財産 62,681百万円 0.4%
有価証券 2,336,792百万円 14.9%
現金、預貯金等 4,799,552百万円 30.6%
家庭用財産 23,118百万円 0.14%
その他の財産 1,639,805百万円 10.4%
合計15,636,241百万円

国税庁HPより
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/sozoku2015/pdf/05_kazeijokyo.pdf

相続財産の内訳を見てみると土地や家屋といった不動産が相続財産の半分近くを占めていることがわかります。

 

相続争いが発生した遺産金額(遺産分割事件の遺産価額)

次に遺産分割事件となった遺産価額を見ていきましょう。
下の表は平成28年度の遺産分割事件となった遺産価額のデータです。

遺産価額 件数
1,000万円以下 2,476
5,000万円以下 3,177
1億円以下 914
5億円以下 538
5億円超 42
算定不能・不詳 338
総数 7,485

裁判所ウェブサイトより
http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/340/009340.pdf

こちらのデータを見て頂くと5,000万円以下が75.5%と財産価額が少ないほど遺産分割事件となっていることがわかります。
このことから相続争いは身近に起こりうる問題と言えるでしょう。

 

遺産分割事件数の推移

今度は遺産分割事件数の推移を見ていきましょう。

年度 件数
平成28年度 12,188
平成27年度 12,615
平成26年度 12,577
平成25年度 12,263
平成24年度 11,737
平成23年度 10,793
平成22年度 10,849
平成21年度 10,741
平成20年度 10,202
平成19年度 9,800
平成18年度 10,112
平成17年度 9,581
平成16年度 9,286
平成15年度 9,196
平成14年度 9,148
平成13年度 9,004
平成12年度 8,889

裁判所ウェブサイトより
http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/334/009334.pdf

このように遺産分割事件の件数は年々増加しています。
平成12年度と平成28年度を比べてみると約1.37倍ほど増加しています。

 

相続放棄の件数と統計

次に相続放棄の件数について見ていきましょう。
下の表は相続放棄の申述の受理数(新受件数)です。

相続の放棄の申述の受理(新受件数)

年度 件数
平成28年 197,656
平成27年 189,296
平成26年 182,082
平成25年 172,936
平成24年 169,300
平成23年 166,463
平成22年 160,293
平成21年 156,419
平成20年 148,526

裁判所ウェブサイトより
http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/292/009292.pdf

このように相続を放棄する件数も多くなっています。
相続はプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も存在するため、マイナスが大きい相続の場合は相続放棄する人もいます。

 

遺産分割の審判期間と回数

次に遺産分割事件の審判の期間や回数について見ていきましょう。
下の表は平成28年度の遺産分割事件の審判期間と回数のデータです。

審理期間

期間 件数
1ヶ月以内 361
3ヶ月以内 1,320
6ヶ月以内 2,951
1年以内 3,906
2年以内 2,729
3年以内 660
3年超 261
総数 12,188

 

実施期日回数

回数 件数
0回  798
1回  1,242
2回  1,700
3回  1,666
4回  1,301
5回  1,043
6~10回  2,841
11~15回  985
16~20回  364
21回以上  248
総数  12,188

裁判所ウェブサイトより
http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/339/009339.pdf

まず審理期間がら見てみると、最も多いのが1年以内で約32%。
次いで6ヶ月以内で約24%、次いで2年以内で約22%です。
次に回数について見ていきましょう。
実施回数は2回が最も多く、次いで3回となっています。
1~5回をまとめてみると6,952と全体の57%ほどになります。
しかし6~10回は全体の23%となっており、期間と回数からも、長期化する案件も多いように思われます。

 

相続争いの原因とは

それでは相続争いが発生してしまう原因は何なのか?
よくある相続争いが起こってしまう事例を見ていきましょう。

 

不動産ばかりで現金がない

よく言われている相続争いが発生してしまう原因のひとつに被相続人の財産が不動産が多く現金が少ないことが挙げられます。
現金の場合、相続人が均等に分けることができますし、多少の調節も可能となります。
しかし不動産の場合、相続人で分けるのが困難で、均等に分けるなら売却して現金化するか共有することになります。
ところが思入れのある家屋などは売却するのに抵抗がある相続人もいますし、相続人がその家屋に住んでいることもあります。
また共有もトラブルとなるケースが多く、あまりおすすめできない方法です。
現金が多く残されていれば、相続人の一人が家屋などの不動産を相続し、それに見合う現金を他の相続人が受け取るということもできます。
また代償分割という形で、不動産を取得した相続人が他の相続人に現金を渡すという方法もありますが、不動産は大きな価値があるものが多いので、なかなかそれだけに見合う金額を用意するのも難しいのが実情です。

 

離婚している

離婚歴があり、前の配偶者との間に子供がいる場合も相続争いに発展するケースがあります。
また、これと似たケースで被相続人に認知した子供がいるケースもあります。
こういった前の配偶者との間に生まれた子供や認知した子供にも相続権があります。
しかし、こういった相続人とは交流がないことがほとんどです。
そのため、そもそも遺産分割協議など話し合いが困難になることが考えられます。
また、後の配偶者やその子供からすれば、財産形成のほとんどは自分達がやってきたという思いがあれば、前の配偶者の子供や認知した子供らに相続させたくないという考えが出てくるのは当然でしょう。
前の配偶者の子供や認知した子供らからすれば、相続人である以上、遺産を受け取るのは当然の権利という考えも理解できるところです。
このようにお互いの主張が納得できる理由であるところから、話し合いが平行線となりトラブルとなってしまうケースがあります。

 

相続人以外が口を挟む

相続人のなかには、様々な状況を考慮して、遺産を受け取らなかったり、少ない金額でも良いと考えていることもあるでしょう。
しかし、その相続人の配偶者などが当然の権利なのだから貰えるものは貰うべきと相続に口を挟むケースがあります。
相続人の意思がはっきりしていれば良いのですが、配偶者など周りの意見に振り回されて主張をころころと変えると他の相続人からの信頼を失いかねません。
最初は遺産はいらないと言っていたのに、権利を主張してきた
何か良からぬことを考えているのではないか
また意見を変えるのではないか
こういった不信感が大きなトラブルへと発展していくこともあります。

 

親の介護

相続人のなかには、親と同居して面倒をみてきたという人もいるでしょう。
自分のプライベートを犠牲にして親の介護をしてきたという人は相続分を増やして欲しいと考えることもあるでしょう。
しかし、他の相続人からすると、その分生活費を援助してもらっているのではないかと考える人もいますし、自分も介護を手伝ってきたと主張する人もいるかもしれません。
こういった考えの違いから相続争いになることも考えられます。

 

生活の困窮

相続人のなかには生活が苦しく、少しでも多く遺産を貰いたいと考える人もいるでしょうし、遺産を当てにして将来設計を立てている人もいます。
こういった相続人は少しでも相続したいという思いから、他の相続人とトラブルになる危険性があります。
また最近、問題となっているのは親に頼って生計を立てているような相続人もおり、悪く言うとパラサイト化している状態の人もいます。
本人としては少しでも相続したいと思うでしょうし、他の相続人からすると面白くないと思うでしょう。

 

子供がいない

子供がいる場合、被相続人の配偶者とその子供が相続することになりますが、子供がいない場合、被相続人の配偶者と被相続人の親が相続することになります。
親がいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続することになります。
被相続人の配偶者には、このことを知らない人もおり、当然に自分が全て相続するものだと思っている人もいます。
配偶者の親や兄弟姉妹と仲が良くない人もいるでしょう。
そういった場合、トラブルに発展するケースも少なくありません。

 

相続争いを未然に防ぐには

これまでは相続争いになる原因について見てきましたが、それでは相続争いを未然に防ぐにはどうすればよいのでしょうか。

 

遺言

相続争いを未然に防ぐために有効な手段のひとつは遺言書を残すことです。
例えば、子供がいない夫婦の場合、どちらかが亡くなったとすると配偶者と被相続人の親、親がいない場合は兄弟姉妹が相続人となります。
遺言書を残しておけば配偶者に多く相続させることも可能です。
ここで問題となるのは遺留分ですが、兄弟姉妹には遺留分がありません。

 

生命保険を利用する

相続争いに発展していまう大きな原因として遺産に現金が少ないことが挙げられます。
現金は均等に分けることが可能なため、相続人に公平に分配することができますが不動産が多いと分けにくいものです
そこで生命保険を利用するという方法があります。
例えば、被相続人の配偶者が唯一の遺産である家屋に住んでいたとします。
他にも相続人がいた場合、本来ならば、配偶者が家屋を相続するのであれば法定相続分を他の相続人に代償分割するということになります。
ここで配偶者を受取人にして生命保険をかけておけば、その代償分割するための現金を用意することができます。

 

相続財産の内容は明確に

当然のことではありますが、遺産分割協議をする大前提として相続財産の内容や内訳を明確にしておく必要があります。
ここで財産が漏れていたりすると相続人たちの中に不信感が芽生えてしまう危険性があります。
ちょっとしたことですが、こういった些細なことが発端となり様々な感情を生み出しトラブルに発展していくことがあります。

 

相続争いになったときの解決法

まず相続人同士で遺産をどのように分け合うか遺産分割協議をすることになります。
相続人同士で話し合う遺産分割協議でまとまるのが最善の方法と言えると思います。
遺産分割の方法は現物分割、換価分割、代償分割といった方法があります。
現物分割は遺産をそのまま分ける方法で、土地や家屋は配偶者に、現金は長男に、有価証券は長女にといった形で分配します。
換価分割は遺産を売却して、そのお金を分け合う方法です。
不動産などは現金のように分けにくいため、換価分割する方法がよく取られます。
代償分割は相続人が他の相続人に金銭などを代償する方法です。
土地や家屋といった不動産が唯一の遺産だった場合など、それを相続した相続人がそれに見合うお金を他の相続人に支払うといった形です。

もしも遺産分割協議がまとまらなかった場合は、遺産分割調停の申立てを家庭裁判所に行うことができます。

調停とは??

被相続人が亡くなり,その遺産の分割について相続人の間で話合いがつかない場合には家庭裁判所の遺産分割の調停又は審判の手続を利用することができます。調停手続を利用する場合は,遺産分割調停事件として申し立てます。この調停は,相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てるものです。
調停手続では,当事者双方から事情を聴いたり,必要に応じて資料等を提出してもらったり,遺産について鑑定を行うなどして事情をよく把握したうえで,各当事者がそれぞれどのような分割方法を希望しているか意向を聴取し,解決案を提示したり,解決のために必要な助言をし,合意を目指し話合いが進められます。
なお,話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され,裁判官が,遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して,審判をすることになります。
裁判所ウェブサイトより
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html

調停は調停委員が間に入って話し合う形です。
あくまでも話し合いとなりますので、調停が成立しないこともあります。
その場合は審判へと移行します。

審判とは??

家庭に関する紛争のうち,家庭裁判所の審判手続で取り扱う一定の事項について,裁判官が,当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官の行った調査の結果等種々の資料に基づいて判断を決定する手続です。
裁判所ウェブサイトより
http://www.courts.go.jp/saiban/qa_kazi/qa_kazi02/index.html

 

弁護士に依頼

相続争いが起こってしまったら弁護士に依頼するという方法もあります。
遺産分割協議もまとまらず、すでにトラブルになっているようなケースでは弁護士に依頼して解決するのも一つの手です。

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