相続問題となる空き家とその対策

相続について

相続問題として近年、増加しているのが空き家問題です。
そこで今回は空き家対策として交付されている補助金や3,000万円の控除など、問題を解決していく上で活用できる方法などをご紹介していきます。

相続した不動産を空き家にするデメリット

核家族が増加したことや都市部への移住が増加したこともあり、親の不動産を相続しても活用する方法がなく空き家となってしまうケースが増えています。
人が住まなくなった家は急激に劣化していきますので、もし、空き家の管理を怠り、物が飛ばされたりして他人に損害を与えた場合、相続人が責任を負う事となりますし、衛生管理がされていないと近隣住民とのトラブルにも発展しかねません。
また不法投棄や放火、不審者の出入りなど犯罪の温床となってしまう危険性もあります。
空き家だからといって、管理をせず、放置してしまうことは意外とデメリットが多いのです。

遺産分割協議が成立していない場合であっても、協議が終了するまで相続財産の不動産は相続人全員の共有となります。
通常は産分割協議が終了する前に相続財産を使ってしまうと単純相続したことになり、その後、相続放棄することはできません。
しかし、空き家の維持管理をするための費用は相続財産から使用しても単純相続したことにはなりませんので、分割協議が長引きそうな場合は、とりあえず最低限度の管理はしておくのが良いでしょう。

登記手続きが面倒になるというデメリット

また相続登記を行わず、問題が大きくなることもあります。
例えば、Aが亡くなりBとCが相続人である場合。
遺産分割協議が終了せず、被相続人であるAが所有していた不動産は空き家となりました。
BとCは、そのまま相続登記せずに月日が経ちました。
その状態のままCが亡くなり、Cの相続人であるD、E、Fがいた場合相続することになった場合、BはD、E、Fと遺産分割協議をしなければなりません。
このように相続登記を先延ばしにすることによって、相続人が増加し、さらに遺産分割協議が困難になることが考えられます。

空き家対策として特別措置法が施行された

「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、適正に管理されていないと自治体に判断された空き家は強制的に解体できるようになりました。
しかも、その費用は所有者の負担となります。
解体費用は数百万円かかると言われており、その費用を所有者が支払うことになってしまいます。
さらに、適正な管理がされていない空き家については固定資産税の「住宅用地の特例」が適用できず、固定資産税などが約5倍ほどに跳ね上がるとも言われています。
ただでさえ、誰も住んでいない空き家に固定資産税などの費用がかかっているのにも関わらず、より多くの費用がかかってしまうことになります。

空き家の対策を行うメリット

空き家対策をおこなう上では様々なメリットがあることは、もうおわかり頂けたかと思います。
では空き家対策を今、おこなうメリットについて見ていきましょう。

空き家解体の補助金制度がある

空き家問題については行政も頭を悩ませており、対策に乗り出しています。
そのうちの一つが空き家解体の補助金です。
空き家解体の補助金は自治体で交付しており、各自治体で違いますが解体費用の半分~1/3程度の補助金が交付されます。
また要件なども各自治体で異なり、旧耐震基準の建物や防火地域の指定があることなどがあります。
まずは空き家を管轄する自治体に補助金の有無や要件を確認してみましょう。

空き家の譲渡所得の特別控除の特例があること

一定の要件を満たした空き家の売却については3,000万円の特別控除が受けられます。
これは2016年4月1日~2019年12月31日までの期間限定です。
要件は以下の通りです。

・相続前は被相続人が1人暮らしの自宅で、相続により空き家となった
・昭和56年5月31日以前に建築された
・マンションなどの区分所有建築物でない
・相続から3年を経過する日の属する12月31日までの譲渡である
・売却額が1億円を超えない
・相続から譲渡まで空き家の状態で使用履歴がない
・行政から要件を満たす証明書が発行されている

空き家問題は深刻化しており、国としても対策を強めています。
そのため、空き家の状態を維持するのは得策とは言えません。

様々な状況があるので、なかなか空き家対策に乗り出せないという人は多いですが、前述したように長引けば長引くほどデメリットが多くなります。
どこかのタイミングで決断し行動に移さなければならないのです。
どの方法を取るにせよ、なるべく早く行動するのが得策ですが、売却を考えているなら特別控除が受けられる、まさに今でしょう。

空き家問題の対策や解決方法

相続に関する空き家問題を解決するには3つの方法しかありません。

・空き家に住む
・売却する
・賃貸として活用する

それぞれ一長一短があり、どれが一番良い選択とは言えません。
一番、すっきりする形としては売却することでしょうか。
もし、少しでも売却益が出るならば、売ってしまうのが良いかもしれません。
しかし、これはあくまでも買い手が見つかればの話なので、築年数が古い、交通の便が悪いなどの状況で、すぐに売却できない可能性もあります。

次に候補としてあるのは賃貸など、空き家を活用する方法です。
賃料が安くても固定資産税や修繕費用に充てられるだけでも違うと思います。
しかし、これも売却と同様で、借り手がいることで成り立つことです。
売却よりは賃借人を見つけるほうが簡単だとは思いますが、立地や条件によっては難しいことも考えられます。
また、管理会社とのやりとりや賃借人の管理など手間もかかります。

最後にあるのが、空き家に住むという選択肢です。
しかし、恐らくはこれができないから、色々な問題を抱えている人が多いのだと思います。
となると売却か賃貸などの活用の2つに絞られます。

空き家バンクを活用して対策してみる

市町村空き家バンクとは?
「空き家バンク」とは、空き家の賃貸・売却を希望する人から申込みを受けた情報を、空き家の利用を希望する人に紹介する制度です。

市町村が運営する市町村空き家バンクは、空き家の有効活用を通した「定住促進による地域の活性化」を図ることなどを目的としています。

埼玉県庁ホームページより
https://www.pref.saitama.lg.jp/a1107/akiyabanku.html#gaiyou

このように空き家バンクとは市町村が運営している、所有する空き家の活用を希望する人と、空き家を利用したい人を繫ぐマッチングサービスです。
空き家バンクを活用するメリットは他にもあります。
自治体によっては空き家を改修する費用に対して補助金を交付しているところもあります。
空き家は長い間使われていないものも多く、住居として活用するために補修が必要となる場合が考えられます。
そんな物件でも活用しやすいように、改修費用に補助金を交付して空き家の活用や移住を支援してくれる自治体もあります。

相続放棄すれば空き家問題は解決するか

これまでは相続した不動産に関する空き家問題に触れてきましたが、空き家問題になるなら、そもそも相続しない、つまり相続放棄すれば良いのではと考える人もいるかと思います。
しかし相続放棄をすれば空き家問題からすぐに開放されるとは言えません。

【民法第940条】
相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

※「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」とは善管注意義務よりは軽い注意義務で用いられるものです。

このように相続放棄したとしても、次の相続人の管理が始まるまでは自己の財産と同一の注意をもって、その空き家の管理を継続しなければならないということに注意が必要です。

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